Novatio Solutionsの導入事例:2,300件×10倍の成果

企業概要: Novatio Solutionsは、複数の企業向けにカスタマーサポート業務を提供するBPO事業者です。大量のチケットを限られた人員で処理する必要があり、対応速度と品質の両立が経営上の最大課題でした。

導入前の課題: 問い合わせ件数の増加に対してオペレーター増員で対応する従来モデルは、人件費の線形増加を招き、利益率を圧迫していました。特にメール対応は、回答検索・ドラフト作成・承認・送信のプロセスに1件あたり平均15〜20分を要しており、ボトルネックとなっていました。

導入したソリューション: AIエージェントを問い合わせ受信〜回答生成〜送信の全プロセスに組み込みました。定型的な問い合わせはAIが自動で分類・回答・送信し、複雑な案件のみ人間のオペレーターに引き継ぐフローを構築しています。

成果: 月間2,300件以上のチケットを自動処理し、メール対応の生産性を10倍に向上させました(KOTORA JOURNAL, 2025)。従来10人で対応していた業務量を、AIエージェント+1〜2人で処理できるようになっています。人件費の削減ではなく、同じ人数でより多くの顧客により速く対応できるようになった点が重要です。

ポイント

カスタマーサポートはAIエージェントのROIが最も見えやすい領域です。処理件数・応答速度・解決率がすべて数値化できるため、効果測定と経営層への報告が容易です。

2,300件+
月間自動処理チケット数
10倍
メール対応の生産性向上率
60%
ServiceNow AIによる手動作業削減率

他社にも応用できるポイント

Novatio Solutionsの事例から、業種を問わず応用できるポイントは3つあります。

  1. 自動処理の対象を明確に線引きした——全問い合わせではなく「定型的で信頼度の高い回答が可能な問い合わせ」に限定して自動化し、それ以外は人間に引き継ぐ設計にしたことで、品質低下を防ぎました。
  2. メール対応を最初のターゲットに選んだ——チャットや電話ではなく、非同期のメール対応から着手することで、AIの回答を人間が確認する時間的余裕を確保しました。
  3. 処理件数と生産性の2指標でROIを計測した——「自動処理チケット数」と「1人あたり処理件数」という明確なKPIを設定したことで、経営層への効果報告が容易になりました。

AIエージェントが処理するCSフロー

カスタマーサポートにおけるAIエージェントの処理フローを、ステップ別に分解します。

1

問い合わせの受信・自動分類

メール・チャット・フォームから届いた問い合わせを、AIエージェントが即座に内容分析し、カテゴリ(技術問題・請求・配送・一般質問等)に自動分類します。

2

ナレッジベース検索・回答生成

分類結果に基づき、社内のナレッジベース・FAQ・過去の対応履歴を検索し、最適な回答ドラフトを生成します。

3

自動応答 or 人間への引き継ぎ

信頼度が高い回答はそのまま自動送信。複雑な案件や信頼度が低い場合は、回答ドラフト付きで人間のオペレーターに引き継ぎます。

4

フォローアップ管理

未解決チケットのフォローアップを自動でスケジュールし、顧客への確認メールを自動送信します。

自動化できる領域とできない領域

すべてのカスタマーサポート業務がAIで自動化できるわけではありません。明確に分けて考えることが重要です。

業務タイプ自動化の可否具体例
定型的な質問への回答◎ 完全自動化可能営業時間、返品ポリシー、アカウント設定方法
ステータス確認◎ 完全自動化可能注文状況、配送追跡、アカウント残高
トラブルシューティング○ 一次対応は自動化可能パスワードリセット、基本的な技術問題
クレーム対応△ ドラフト生成までAIがドラフトを作成、人間が感情面を含めて対応
複雑な技術問題△ 情報収集までAIが関連情報を集約、専門エンジニアが解決
法的リスクのある案件✕ 人間対応必須損害賠償、契約紛争、規制関連
カスタマーサポートにおけるAIと人間の役割分担
図1:問い合わせ全体の約70%をAIエージェントが処理し、残り30%の複雑・高リスク案件を人間が対応するモデル。

導入効果の測定指標

カスタマーサポートでAIエージェントの効果を測定する際は、以下のKPIを追跡します。

KPIAI導入前(一般的)AI導入後(目標値)
平均初回応答時間4〜24時間5分以内(自動応答)
平均解決時間24〜48時間2〜6時間
自動解決率0%40〜70%
オペレーター1人あたり処理件数30〜50件/日100〜200件/日
顧客満足度(CSAT)70〜80%85%以上
月間対応可能件数人員比例で増減AIでスケール可能

自社への導入ステップ

1

ナレッジベースの整備

FAQ・対応マニュアル・過去のチケット解決データを整理・デジタル化します。AIエージェントの精度はナレッジベースの品質に直結します。

2

チケット分析

過去3〜6ヶ月のチケットデータを分析し、自動化可能な問い合わせの割合を把握します。目安として40%以上が定型的であればAI導入の効果が期待できます。

3

パイロット運用

定型的な問い合わせカテゴリ(パスワードリセット、ステータス確認等)に限定してAIエージェントを導入し、2〜4週間テスト運用します。

4

精度改善とスコープ拡大

パイロットのフィードバックを元にナレッジベースを改善し、対応範囲を段階的に拡大します。

注意

AIエージェントによる自動応答は、応答品質が低いと顧客満足度を逆に低下させるリスクがあります。導入初期は「信頼度が高い回答のみ自動送信、それ以外は人間に引き継ぎ」の保守的な設定から始めてください。

まとめ:CSのAIエージェント導入で押さえるべき3つのこと

  1. カスタマーサポートはAIエージェントのROIが最も明確な領域——処理件数・応答速度・解決率がすべて数値化でき、効果測定が容易です。
  2. 自動化の範囲を明確に線引きする——定型質問は完全自動化、複雑案件はAIドラフト+人間判断、法的リスク案件は人間のみ。
  3. ナレッジベースの整備が9割——AIエージェントの精度は入力データの品質で決まります。導入前のナレッジ整備に十分な時間を投資してください。