Amazon Bedrock Agentsとは

Amazon Bedrock Agentsは、AWS上でAIエージェントを構築・デプロイ・運用するためのフルマネージドサービスです。基盤モデル(FM)の選択、ツール連携、メモリ管理、マルチエージェント協調をAWSのインフラ上で統合的に提供します(AWS, 2025)。

ポイント

Bedrock Agentsの最大の強みは「AWSエコシステムとのネイティブ統合」です。Lambda、S3、DynamoDB、CloudWatch、IAMなどの既存AWSサービスとシームレスに連携でき、すでにAWSを利用している企業はエージェント基盤の構築コストを大幅に削減できます。新規にインフラを設計する必要がなく、既存のセキュリティ・監視・権限管理をそのまま活用できます。

Bedrock Agentsの5つの主要機能

100+
Bedrock AgentCoreが対応するモデル・ツール・フレームワークの統合数
15%
2028年までにAIエージェントが自律的に行う日常的意思決定の割合
33%
2028年までにエージェンティックAIを組み込むエンタープライズソフトの割合

1. AgentCore:エージェントのライフサイクル管理

AgentCoreは、エージェントの構築からデプロイ・運用・スケーリングまでのライフサイクル全体を管理する基盤です。

機能概要ユースケース
マネージドランタイムエージェントのデプロイとスケーリングをAWSが管理本番環境でのエージェント安定運用
ID・認証管理IAMと統合されたエージェントの権限制御エージェントが操作できるリソースの制限
メモリ管理セッション間のコンテキスト保持をマネージドで提供継続的な顧客対応エージェント
ツール連携Lambda関数をエージェントのツールとして直接呼び出し既存のビジネスロジックをエージェントに接続
監視・ロギングCloudWatchとの統合によるリアルタイム監視エージェントの挙動監視とデバッグ

2. マルチエージェント協調

Bedrock Agentsは、スーパーバイザーパターンによるマルチエージェント協調をネイティブにサポートしています。

[スーパーバイザーエージェント]
  ├─ タスクの分解と割り当て
  ├─ サブエージェントの結果統合
  └─ 全体の品質管理
       │
  ┌────┼────────┐
  ▼    ▼        ▼
[検索エージェント] [分析エージェント] [文書生成エージェント]

スーパーバイザーエージェントが全体のタスクを分解し、専門化されたサブエージェントに割り当て、結果を統合します。各サブエージェントは独立して動作し、失敗時のリトライもスーパーバイザーが管理します。

3. RAG(Retrieval-Augmented Generation)

Knowledge Basesと連携し、企業のドキュメント(S3にアップロード)をベクトルDB化して、エージェントが参照できるようにします。

1

ドキュメントのアップロード

S3に社内ドキュメント(PDF、Word、HTML等)をアップロードします。

2

自動インデックス化

Knowledge Basesが自動でチャンク分割、ベクトル化、インデックス作成を行います。

3

エージェントからの検索

エージェントがユーザーの質問に関連する情報をKnowledge Basesから検索し、回答に活用します。

4

ソースの引用

回答にはソースドキュメントの引用が自動的に付与されます。

4. コード解釈(Code Interpretation)

コード解釈は、エージェントがPythonコードを動的に生成・実行し、データ分析、計算、グラフ生成を行う機能です。ユーザーが自然言語で「売上データの月次トレンドをグラフにして」と指示すると、エージェントが適切なPythonコードを自動生成し、サンドボックス環境で安全に実行して結果を返します。

コード解釈はBedrock Agentsのセッション内でセキュアに実行されるため、外部のコード実行環境を用意する必要がありません。データの読み込み、変換、統計処理、可視化までをエージェントが一貫して処理します。

活用パターン入力例(自然言語)エージェントの処理
データ分析「Q1とQ2の売上を比較して」CSVを読み込み、四半期ごとの集計・比較表を生成
グラフ生成「月別のコスト推移を折れ線グラフにして」matplotlibで可視化し、画像として返却
計算・シミュレーション「年利3%で5年運用した場合の複利を計算して」金融計算コードを生成・実行し、結果テーブルを返却
データ変換「このJSONをCSVに変換して」pandasでデータ変換を実行し、ダウンロードリンクを生成

5. メモリ保持

メモリ保持は、セッション間のコンテキストを永続的に保存し、エージェントが過去のやり取りを参照して応答する機能です。顧客対応エージェントが「先月の問い合わせの続きですが……」と尋ねられた場合でも、過去の会話コンテキストを自動で参照し、一貫性のある応答を返せます。

Bedrock Agentsのメモリ管理はAgentCoreのマネージドサービスとして提供されるため、開発者が独自にデータストアを設計する必要がありません。メモリの保持期間、スコープ(ユーザー単位・セッション単位)、容量はAWSコンソールで設定できます。

メモリの種類保持範囲ユースケース
セッションメモリ1回の会話セッション内長い会話の文脈を維持(例:複数ステップの注文処理)
ユーザーメモリ同一ユーザーのセッション間過去の問い合わせ履歴を踏まえた対応(例:継続サポート)
要約メモリ長期間のやり取りの要約過去の重要情報を圧縮して保持(例:顧客の嗜好・購入履歴)

他のプラットフォームとの比較

項目Amazon Bedrock AgentsOpenAI Agents SDKGoogle Cloud ADK
基盤モデルAnthropic, Meta, Mistral, Amazon Titan等(マルチモデル)OpenAI GPT系のみGemini中心(サードパーティ対応)
マルチエージェントスーパーバイザー型をネイティブサポートハンドオフパターンで実現A2Aプロトコルで分散型を推奨
RAGKnowledge Basesとネイティブ統合File Search(ビルトインツール)Vertex AI Searchと統合
デプロイ基盤AWSフルマネージドAPIベース(インフラは自前)Cloud Runとネイティブ統合
最適な企業既存AWS環境を活用したい企業OpenAI APIを中心に構築したい企業Google Cloud / GWS利用企業
プロトコル対応MCP対応独自SDKA2A+MCP対応

AWS環境でのエージェント構築パターン

パターン1:カスタマーサポートエージェント

ユーザー → Bedrock Agent → Lambda(顧客DB照会)
                         → Knowledge Bases(FAQ検索)
                         → Lambda(チケット作成)
         ← 回答+対応結果

パターン2:データ分析エージェント

ユーザー → Bedrock Agent → Athena(データクエリ)
                         → Code Interpreter(分析・可視化)
                         → S3(レポート保存)
         ← 分析結果+グラフ

パターン3:業務自動化マルチエージェント

ユーザー → Supervisor Agent
            ├─ 受注エージェント → Lambda(注文DB)
            ├─ 在庫エージェント → Lambda(在庫DB)
            └─ 配送エージェント → Lambda(配送API)
         ← 統合処理結果
注意

Bedrock Agentsの料金体系は「モデル呼び出し+ツール実行+ストレージ」の従量課金です。マルチエージェント構成ではスーパーバイザーとサブエージェントの全呼び出しが課金対象となるため、エージェント数が増えるほどコストが増加します。本番導入前に負荷テストでコスト見積もりを行い、必要に応じてキャッシュ戦略やリクエスト数の最適化を検討してください。

まとめ

Amazon Bedrock Agentsは「既存のAWS環境を活かしてエージェントを構築したい企業」にとって最も効率的な選択肢です。AgentCoreによるライフサイクル管理、スーパーバイザー型マルチエージェント、Knowledge BasesによるRAG——この3つの機能を組み合わせることで、エンタープライズグレードのエージェント基盤を迅速に構築できます。まずは単一のカスタマーサポートエージェントから始め、段階的にマルチエージェント構成に拡張してください。